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【NEWS】ツボカビ対策マニュアル

2010-10-29
カエルにおける病気のコントロールのための衛生プロトコル

1.イントロダクション
この回覧情報は以下の項目に対する対策を概説している:
・ 野生のカエル個体群内あるいは個体群間で伝播される病原体が原因となる疾病を予防し、減らすためにはどうすればよいか。
・ 捕獲されたカエルが放逐に先立って感染していないことを確認するにはどうすればよいか。
・ 移動させられてしまったカエルを安全に取り扱うにはどうすればよいか。
・ 野生下で病気のあるいは死亡したカエルを正しく識別し、その管理を手助けするにはど
うしたらよいか。

1.1 誰がこの資料を読むべきか?
このプロトコルはカエルの野外研究に取り組んでいる全ての研究者、野生動物コンサルタント、動物監視員および学生に使用されることを目的としている。加えて、このプロトコルはNational Parks and Wildlife Service(NPWS)職員、カエル飼育者、野生動物の救済・救援組織、両生爬虫類/カエルに関与する団体/学会、動物公園/動物園の経営者/従業員、日ごろカエルを扱うか、カエルに遭遇しそうな個人が読むべきである。

このプロトコルは、カエル個体群に関する活動時に用いられることをNPWS が期待している予防手段の要点を述べている。カエルを対象に働く全ての人々が衛生管理手法を積極的に導入するようになることを意図している。このプロトコルに従うかどうかがライセンスの申請受理や更新の条件となるだろう。NPWS は、特殊な調査やカエルを扱うその他の活動においてプロトコルが多少変更されることがあっても問題ないと認識している。そのようなプロトコルの変更の提案がNPWSに対するライセンスの申請や更新に伴って行われるべきである。

1.2 背景
1.2.1 両生類のツボカビ
種の絶滅および局所的な個体群の絶滅を含む、カエルの明白な減少が国際的にも全国的にも関心が高まってきた。カエルの減少の潜在的な原因が何であるかということについて多くの提案がなされてきている(例えば、Pechmann ら1991;Ferrero,Bergin1993;
Pechmann,Crump1994;Pounds,Crump1994;Pounds ら1997)。しかしながら、多くの
地域での減少のパターンは、おそらく流行性疾患が原因であるということを示唆している
(Richards ら1993;Laurance ら1996;Alford,Richards1997)。最近の研究では、オース
トラリアや他の地域でのこうした減少の多くの場合に、特別な病原体として水系感染真菌病原体Batrachochytrium dendrobatidis が関係しているであろうとみなされている。この病原体は、両生類またはカエルのツボカビとして普通に知られており、そしてツボカビ症の原因である。(Berger ら1999)

B.dendrobatidis はツボカビ門に属する真菌である。この門に属するほとんどの種は自由生活の腐生菌として水中や土壌中に生息し、砂漠、北極圏ツンドラ、熱帯雨林を含むほとんどすべてのタイプの環境で見つかっており、主要なかつ重要な生物分解菌であると考えられている(Powell1993)。B.dendrobatidis はツボカビ門菌類の中でも独特な寄生形態を有する。この真菌はオタマジャクシを含む両生類の皮膚に侵入し、しばしば散発性の死の原因となり、ある個体群では最大100%の死亡率を示す。ツボカビ症はオーストラリアにおいては国内の40 種以上の両生類で発見されている(Mahony and Wekman2000)。しかしながら現在のところ、このカビがオーストラリアの風土病的感染症なのか外来性であるかは知られていない。

B. dendrobatidis の感染ステージは遊走子(zoospore)で、水を介して伝播する(Bergerら1999)。感染した両生類から離れた遊走子は同じ水の中にいる他の両生類に感染することができる能力がある。野生下での感染の動態についてさらなる調査が必要とされている。
B. dendrobatidis は、季節性の気候の変化、脱水症、塩分、水のpH、光、栄養素、溶存酸素に対して影響を受けやすいということが知られている。(Berger ら1999)

1.3 目的
衛生プロトコルの目的は:
・ NPWS 職員、研究者、コンサルタント、その他カエルの愛好家、カエルを取り扱う個人などにとって最善の実践手段を推奨すること。
・ 普段野外でカエルの調査を行っている人やカエルのツボカビのような病原体が拡散している可能性のある湿地帯やその他の水生環境で野外研究活動を行っている人にとって実行可能な対策を示すこと。
・ アドバイスを提供する人やカエルに関係した活動を監督している人たちに対してバックグラウンド情報やガイダンスを提供すること。
・ 職業としてカエルに関した活動を行っている人たちに対して、標準的な認可条件を提供すること。
・ Animal Care とEthics Committees-倫理委員会(ACEC)に、研究認可を与えるときの認証のための情報を与えること。

2.衛生管理現場
カエルを研究している人々はしばしば旅行し、カエルを様々な場所から集めてくる。あるカエル個体群はカエルツボカビのような感染性病原体の浸淫に特に敏感である。また、個体群の生息場所を移すことは、感染性病原体の伝染に対してカエルを特に弱くする。そのため、カエルに関連した仕事をする人々は場所の境界線を認識し、感染の広がりの可能性を減らす対策を取ることが重要である。

非常に絶滅の危機に瀕した種または個体群が生息していることが知られた場所では、このプロトコルはとても短い距離の範囲で適用されるべきである、すなわちあるひとつの場所は分割され、別々の場所として扱われる必要がある。

様々な場所を調査することを計画したときは、感染をうけたエリアに入る前に、常にカエルツボカビの存在が知られていない場所から開始する。

2.1 場所を決める
場所の境界線を決定するのは難しいであろう。ある場所では場所の境界は明らかであろう、しかし他の場所ではそうではないであろう。多数の場所で研究を行うこと、または歩ける距離内の場所でルーチンモニタリングを行うことは、境界線を明確にすることを明らかに困難にしている。場所の境界線を決定することは地域によって異なるであろう。自然または人工物-例えば道/路線、川や海のような大きな水の集まり、目立った生息環境の変化、貯水池の境界-は場所の境界の論理上の指標となる。

原則として、それぞれの水環境(waterbody)は別々の場所として考えられるべきである。

川や小川に沿って湿地帯や沼の周囲を歩くとき、ほとんどの場合、このプロトコルの目的に則して、これらの例をひとつの場所として取り扱うことは理にかなっている。カエルが沼と沼の間を自由に行き来することが知られている場所が、こうしたケースでなるであろう。

独特の支流や集水地域、明らかな分かれ目や分断区域がある場所からなる河川では、特にそれぞれの場所の間でのカエルの行き来が知られていないのであれば、それらは別々の場所として扱われるべきである。

2.2 現場での衛生状態
種々の活動の現場から現場へと移動をするときは、靴、備品、自動車を介して疾病を持ち込むのを最小限にするために、以下の衛生予防措置を行うことを推奨する。


靴は野外調査を開始する際やそれぞれのサンプリング現場間で徹底的に清掃し、消毒しなくてはならない。
これは、靴の泥を削り落とすこと、靴の裏を消毒液につけることによって達成されることができる。その後の靴はベンザルコニウム塩化物を有効成分として含む消毒液ですすぐか、スプレーするべきである。消毒液が水環境に流れ込まないようにしなければならない。

清掃と消毒のたやすさから、‘ゴムブーツ’とか‘ウェリントンブーツ’のようなゴム製のブーツが推奨される。

現場ごとにそれぞれ靴カバーを変えることが清掃の実用的な代行となるかもしれない。

備品
ネット、計り、測定器、バッグ、メス、ハンドライト、懐中電灯、ウェットスーツ、防水ズボンなどの備品を使ったら、他の現場で使う前に清掃、消毒しなくてはならない。

可能であればディスポーザブル品が使われるべきである。ディスポーザブルでない備品は特定の野外調査において一箇所のみで使用され、後に、またはその場で2.4 以下で述べる方法で消毒されるべきである。

自動車
必要に応じて、ハイリスクな地域では、車のタイヤは消毒液でスプレーするか、勢いよくかけるべきである。
車を介して疾病が伝播されるということは問題とはなりえない。しかし、自動車が既知のカエルの生息場所を行き来したら、結果として泥や水が他の水環境やカエルの生息場所へと移動されるということになる。そこで、車輪やタイヤに清掃と消毒が行われるべきである。消毒液が近くの水環境に流れ込まず土壌に浸潤することができるように、清掃や消毒は水環境から安全な距離を置いた場所で行われるべきである。

‘toilet duck’(有効成分ベンザルコニウム塩化物)の噴霧が自動車の車輪やタイヤを消毒するのに推奨される。

車に乗り込む前に靴の裏を清掃することは、車の床やコントロールペダルを病原体で汚染したり、またはそれらが病原体の汚染源となることを防ぐであろう。

2.3 野外でのカエルのハンドリング
カエルツボカビのような病原体の伝播はカエルをハンドリングした結果として起こるかもしれない。
カエルは必要なときのみハンドリングすべきである。

カエルをハンドリングする際は、病原体の移動の危険性を、以下のようにして最小限にする必要がある。
・ サンプリングとサンプリングの間に手を洗いかつ消毒をするか、ディスポーザブルの新しい手袋をサンプル毎に使うべきである※1。このことは、消毒液とペーパータオルを作業エリアに用意することでも達成されるであろう。
・ カエルのハンドリングに対する‘1バック-1カエル’法は、特に複数の人が一緒に作業をしているなかで、1人が種々の処理を行い、他の人が採集をするような場合には使われるべきである。袋を再利用するべきではない。
・ オタマジャクシについても‘1バッグ-1サンプル’法を適用するべきである。袋を再利用するべきではない。

※1原則として、このプロトコルは感染したカエルがいる沼の全てのカエルがカエルツボカ
ビに汚染されているわけではないということを前提としている。水環境の感染負荷は、同じ沼にいる個々のカエル同士の交差汚染を引き起こすほどは高くない。したがって、個々のカエルの間で感染負荷を高くして伝播が起きないように、それぞれのサンプルについて別々の手袋を使い、手を洗うという注意が払われるべきである。

Toe clipping(指端採取)あるいはPassive Integrated Transponder(PIT)タグの取り付けを行っている研究者は、カエルの環境に直接病原体を導入してしまう可能性があることから、カエルの間で疾病が伝播するリスクを高めるようである。これは以下のものを使うことによって最小限にすることができる:
・ ディスポーザブルの滅菌器具
・ あらかじめ消毒され一度だけ使用する器具
・ それぞれのカエルの間に消毒された器具
toe clipping やPIT タグにより開いた傷は、病原体の侵入の可能性を減らすために、Vetbond©のようなシアノアクリレート化合物で塞ぐべきである。The NPWS ACEC はさらに、外科処置の前後に、局所麻酔薬のXylcain©クリームやBetadine©消毒液(1%溶液)の適用を推奨している。続いて、傷用シーラントを使うべきである。

すべての消毒液、手袋、その他のディスポーザブル品はsharps(鋭利医療器具廃棄容器)か他のゴミコンテナに保管され、野外調査の完了時には適切に滅菌されるべきである。消毒液はカエルと接触させてはならないし、いかなる水環境(waterbodies)への汚染も許してはならない。

2.4 消毒方法
手や備品の消毒薬は細菌、発育中および胞子の状態の両方の真菌類に効果的でなくてはならない。以下の薬剤が推奨される。
・ Halamid©、Halasept©、Hexifoam©のようなクロラミンとクロルヘキシジンをベースとした製品が細菌と真菌の両方に対して有効である。これらの製品は手、靴、道具その他の備品に使用するのに適している。これらの溶液を用意する時は製品の使用説明書に従うべきである。
・ 適切な濃度に希釈された漂白剤やアルコール(エタノールかメタノール)は細菌や真菌に対して有効である。しかしながら、これらの物質には腐食性や危険性があるため、実用的でないかもしれない。

メタノールを使うときはどちらかを行う
・ 70%のメタノールに30 分漬ける。
・ 100%のメタノールにさっと浸けた後、10 秒間炎に当てるか、水中で10 分間沸騰させる。

新鮮な漂白剤(濃度5%)はRana ウイルスのようなカエルの他の病原体に対しても有効である。

これらの方法で簡単に消毒できない備品は、医療用標準70%イソプロピルアルコールを染み込ませた布巾-Isowipes©を使うことによって効果的に清掃することができる。

3.捕獲したカエルの衛生管理
3.1 カエルおよびオタマジャクシの飼育環境
カエルおよびオタマジャクシは絶対に必要に迫られた時を除いては、生息地から移動させるべきではない。

カエルおよびオタマジャクシを一時的に集めて留置、飼育する必要があるときは、下記の対応を取るべきである。
・ 異なる地域から捕獲されてきた動物はそれぞれの捕獲場所別に隔離するべきである。
・ 捕獲されたカエルの飼育容器をそろえる場合に、水、装置、濾過器を他と共有すべきでない。隣接した飼育装置からの水しぶきや捕獲ネットからの滴は、病原体をケージ間で伝播させてしまう可能性がある。
・ カエルおよびオタマジャクシの飼育に先立って、水槽、飼育水、その他の装置を確実に消毒する。
・ カエルおよびオタマジャクシを飼育容器から移したら、直ちに水槽と装置を洗浄、消毒、
乾燥させるべきである。

3.2 オタマジャクシの取り扱い
大抵の場合:
捕獲あるいは繁殖孵化したオタマジャクシを野生に返すことは避けるべきである。
維持管理を目的に飼育下で繁殖させたオタマジャクシを自然に帰すことを考える際には、NPWS に移転提案書を提出し、かつ病理検査により病気を診断するべきである(NPWS の移転方針ポリシーを参照のこと)。オタマジャクシを放す予定の前に、無作為に選んだ10個体を6 週間前、続いてさらに2 週間前に検査する。検査はTaronga Zoo、Newcastle
University、CSIRO Australian Animal Health Laboratories at Geelong and James Cook
University at Townsville のそれぞれの病理部門により実施が可能である。放す前に、上記のうちのどこかの機関と接触を取り協議する必要がある。(付録2 の連絡先詳細を参照のこと)

NPWS はNSW Department of Education and Training(DET)が、学生・教員に対して教室での生活環の学習のためにオタマジャクシを生息地から移動させることを許可する予定である。学校は一箇所から最大20 個体までの移動の認可を得る予定であり、それぞれの学校もDET Animal Care and Ethics Committee からの承認を求めている。
このような目的で集めるオタマジャクシは学校があるそれぞれの地域から入手するべきであり、NPWS 保護地からは入手するべきではない。オタマジャクシは変態したらすぐに、カエルを捕獲した正確な場所に返さなければならない。異なる場所からきたオタマジャクシは混合してはならない。
カエルのツボカビを有するオタマジャクシの抗真菌洗浄治療は現在試みられている。将来はこの治療法を小さいカエルを放す前の必須の手順として加えるかもしれない。

3.3 カエルの取り扱い
元来の個体群に病原体を持ち込まないようなカエルの取り扱いに厳しく対処するということは、成体のカエル(特に絶滅危惧種)を野生下の個体群から持ち去るといういかなる提案に対しても慎重に配慮しなければならないということを意味している。

挿絵:捕獲したカエル及びオタマジャクシの
飼育は確実に安全面、衛生面に注意すること。
カエルを野生から移動させる必要があるとき、以下の事項が適用されるべきである。
移動させた個体は検疫のために2 ヶ月間隔離し、病気や疾患の徴候を観察する必要がある。

何らかの病気や感染の証拠が見つかった場合は、カエルを放すべきではない。病気の可能性が疑われる場合、問題の本質を決定するためにできる限り早期に、指定されたカエルの受け入れ先(付録2)から更なるアドバイスを得るべきである。ツボカビ症は保存された指端や脱落した皮膚の標本の顕微鏡による検索によって診断できる。ツボカビ症の検査技術や感染カエルの治療の研究が未だ進展中である。

使用されるであろう現状で行われている方法を挙げる。
・ 感染している可能性があるカエルの治療技術としては、塩化ベンザルコニウム溶液1mg/L を1日1 時間ごとに1,3,5,9,11,13 日目の治療期間に1 匹ずつ浸漬する。カエルはそのとき2 ヶ月間分離または隔離される。これとその他可能性のある治療法は、
Berger とSpeare(1998)が報告している。
・ Betadine○c とBactone○c による治療も成体のカエルで数例成功している(M Mahony,
Newcastle University 私信)。
・ Itraconazole○c は高価な薬であるが有効である(Lee Berger CSIRO Australian Animal
Health Laboratory 私信)。この方法は以下のウェブサイトに情報がある。
http://www.jcu.edu.au/school/PHTM/frogs/adms/attach6.pdf.

治療を受けているカエルは個別に飼育し、非感染個体とは隔離する。

3.4 住処をなくしたカエル
住処をなくしたカエルとは、固有のカエル種であり、たまたま生鮮食品や輸送品、造園関連品とともに国内の各地に移動させられ、移入されてしまったCane Toad(Bufomarinus)のようなカエルである。移入されたまたは住処を失った固有のカエル種に遭遇した時に取るべき手順は次のとおりである。

3.4.1Banana box frogs
‘Banana Box’ frog は、数種の固有種のカエル(たいていは、Litoria gracilenta 、
L.infrafrenata、L.bicolor、L.caerulea)の呼び名であり、果物や野菜の積荷と造園関連品とともによく輸送されてしまう。過去には善意ある人々がこれらのカエルを元の場所に戻そうと試みたが、これを正確に行うことはたいてい不可能である。もしこれらのカエルたちがあちらこちらへ移動するとすれば、疾病が広がるリスクがある。
以下のことを強く推奨する。
住処をなくしたBanana box frog は感染しているとして扱うべきであり、NPWS によって具体的に承認されていない限り、野生に放す目的でどこかへ運ぶべきではない。

住処を失ったカエルに出会った時
・ 動物を集めることを認可された野生動物救護機関と連絡を取る。カエルは承認されている消毒治療を行いながら、2 ヶ月間検疫のために隔離されるべきである。
・ 検疫期間終了後、カエル(もし上記のどれか1 種であると同定された場合)は認可されている飼育者のところに移されるだろう。その他の全ての種は、移動する前にNPWS野生動物許可局(WLU)からの認可が必要である。認可された救護団体はこのようにして得られ処理されたカエルを記録し、受け入れなければならない。
・ 認可されたカエル飼育者は、毎年行われるNPWS へのライセンスの返却時にこれらのカエルのリストを作らなければならない。

認可されたカエル飼育者が飼育するカエルはNPWSの特別な許可がない限り野生に放されることはない。

住処をなくしたカエルは研究プロジェクトや展示の目的で認可された機関に利用されるかもしれないし、またはオーストラリア博物館にNPWS WLU に以前一度認可されたことがある科学標本として提供される。

3.4.2 オオヒキガエル
オオヒキガエルはカエルツボカビ菌のキャリアとして知られており、故意に移動したり野生に放したりするべきでない。

もし、オオヒキガエルが彼らの通常生息すべき地域から外れて発見された場合、それらは慈悲深く推奨されたNSW 動物福祉顧問審議会手順(付録3)にしたがって、安楽死させるべきである。誤同定により固有種のカエルを安楽死してしまうのを避けるために注意しなければならない。

3.4.3 それぞれの土地のカエル種
道路や住居の周囲、庭、スイミングプールの中で出会うカエルは住処を失ったカエルと考えるべきではない。

このような状況で遭遇するカエルは道路から離し、住居から遠くに放し、またはスイミングプールから出してやり、なるべく近くの草木のある場所や適した生息地に放すべきである。

卵を産んでいるカエルやオタマジャクシをスイミングプールの中で見つけた時は、野生動物救護/救助団体に援助を照会するべきである(付録4 を参照)。

既存種か住処を追われた種か確信が持てない場合はFrogwatch Helpline と連絡を取る。

挿絵:カエルはよく無作為のうちに生鮮食品や造園供給品と一緒に輸送されてしまう。彼らはまとめて’banana box’frog または住処を失ったカエルとして知られている。

4.病気のまたは死亡したカエル
病気や死亡の原因が明らかでないかぎり(例えば捕食または轢死)、野生で出会った病気や
死亡したカエルは4.2 項以下に記載した手順に従って捕獲し、処理すべきである。

4.1 病気のそして死にかけているカエルの症状
病気の死にかけているカエルはツボカビ感染に特有の症状を示す。症状は外観や行動に現れるかもしれない。これらの症状の要約は下記に示してある。さらに詳細な情報がBergerら(1999)、または、James Cook University Amphibian Disease ウェブサイトにある。
http://www/jcu.edu.au/school/phtm/PHTM/frogs/ampdis.htm. その他の役に立つウェブサイトの一覧がNPWS(2001)内で提供されている。

外観(1 つまたはそれ以上の症状)
・ 暗色または発疹だらけの上部(背部)表面
・ 赤みがかった/ピンクの色合いの下部(腹部)表面そして/または脚そして/または水かきまたは指端
・ 腫脹した後肢
・ 高度の削痩と衰弱
・ 皮膚病変(潰瘍、しこり(lumps))
・ 感染した眼
・ 明らかに非対称的な外観

行動(1 つまたはそれ以上の症状)
・ 無気力に足を動かす、特に後肢
・ 異常行動(例えば、夜行性で穴を掘るまたは樹上性のカエルが誰にでも見られるような場所で一日中座っていたり、近づいても逃げようとする気力がない。)
・ 触ってもわずかに動く程度か、動かない。

診断的行動テスト
病気のカエルは以下のテストの一つまたはそれ以上に当てはまらない
試験 / 健康 / 病気
優しく指で触る / 目をぱちぱちさせる / 目をぱちぱちしない
ひっくり返す / もとに反転する / ひっくり返ったまま
口を優しく握る / 前足を使って、握られた状態から逃げようとする /反応なし
挿絵:重篤なツボカビ感染のGreat barred frog(Mixophyes fasciolatus)―元気消失、皮膚の脱落

4.2 病気または死んだカエルをどうするか
病気または死んだカエルの準備と移動のための手順は以下に示す。この手順を順守するこ
とは、病理検査に適した状態を保ち、NPWS や調査者が病気の拡大や感染した種の数を決
定する助けとなる。
・ 病気または死んだカエルを保定するときは、ディスポーサブルの手袋を着用すべきであ
る。病原体の伝播と数種のカエルからの毒性のある皮膚分泌物が付かないように、食べ物や自分の口、目に触れないようにする。
・ 新しい手袋、きれいなポリ袋を二次感染を防ぐためにそれぞれのカエルの標本に使うべきである。手袋を使えない場合は、素手ではさわらず、カエルを入れ物に移すための道具を使うべきである。
・ もしカエルが死んでいたら、標本はできる限り速やかに冷やして保存する(カエルは死後すぐに腐って検査が難しくなる)。標本は70%エタノールか10%中性緩衝ホルマリンで固定/保存する。

腹部を切開し、カエルを約10 倍量の保存液の中に入れる。別の方法として、標本を冷凍する(いくつかの検査には適さなくなるが)。もしたくさんのカエルが集まったら、いくつかは固定・保存し、いくつかは冷凍する。死んだカエルの一部、例えば固定・保存した足や脚、腹部の皮膚の一部を分析にまわす。

・ 入れ物には少なくともカエル種、日付、場所が分かるようにラベルしておく。統一された記載形式は付録5 に掲示してある。
・ 生きていたが移動しても生存できそうにない場合は(死ぬ間近)、安楽死させ(付録3)標本を冷凍庫に入れる。冷凍すれば標本はいつでも下記のアドレスに送付することができる。
・ もしカエルが生きていて輸送にも耐えられそうな場合、湿った葉を散らした湿った布袋に入れるか、または湿った葉を入れたポリ袋に入れ、密閉する前に部分的に膨らませておく。輸送の間、全てのカエルは別々にしておくことを忘れてはならない。
・ 保存された標本は瓶に入れるかまたは湿った布でくるみ、袋に入れて密閉し、詰め物をした箱の中に入れて送ることができる。
・ 冷凍材料はドライアイスと一緒にアイスボックスに入れて送る。
・ 生きているまたは冷凍した標本は小さな発泡スチロール製アイスボックスに入れておく。
・ 付録2 に挙げられている研究室のうちの1つの宛先を書き、ガムテープでアイスボックスを密閉する。
・ 宅配業者に送ってもらう(NPWS はTNT Express Overnight を使用している)。
・ アイスボックス、氷、保冷剤、宅配業者に使った領収書をNPWS 絶滅危惧種課北部理事会からの補償のために保管しておく。(付録5)

5.Reference
省略。

付録1
衛生学的手順のチェックリストと野外用キット
以下のチェックリストと野外用キットはカエル間の病原体伝播のリスクを最小限にするために考案されている。

野外でカエルを扱う前に以下の質問を考慮したことがあるか。
・ 提案している野外への外出は衛生的な問題を勘案して熟考した上で計画されているか。
・ 場所(特に絶滅危惧種もしくは危険にさらされている集団が存在するということが知られている場所)の境界を考慮したことがあるか。
・ 履物の消毒手順は考慮され、対応は取れているか。
・ 使用する機器は計画され、消毒方法は構築されているか。
・ (車両のハンドルまたはタイヤ、制御ペダルを考慮して)車両の消毒が必要となる場所を訪れようとしているか。もしそうならば、車両を消毒する計画はしているか。
・ 取り扱い方法はカエルからカエルへの病原体の伝播のリスクを最小限にするように計画されているか。
・ 機器、衣服、直接カエルに接触するものの消毒手順を計画しているか。
これらの質問のいずれかに対してNO と答えたならば、カエルの疾病制御についてのNPWS の衛生的手順の該当部分をもう一度読み、適切な方法を適用してください。
野外衛生キット
野外でカエルを調査しようとするときは、携帯用の野外衛生キットがこの手順を実行しやすくするために揃えられるべきである。推奨される野外衛生キットの内容は以下のものを含む。
・ 小さな発泡スチロールのアイスボックス
・ 使い捨て手袋
・ 消毒剤噴霧ビン(スプレー噴霧器)と/もしくは洗浄ビン
・ 消毒液
・ 洗浄ビン
・ スクレーパーまたはたわし
・ 小さなバケツ
・ 大小のビニール袋
・ ゴミ廃棄用の容器
・ Section4 に沿った、病気や死んだカエルを扱うための機器材

付録2
指定された病気と死亡したカエルの受領担当者
以下省略。

付録3
NSW 動物福祉顧問審議会手順

オオヒキガエルまたは重篤なカエルを慈悲深く安楽死させるためのNSW 動物福祉顧問審議会の手順を以下に記載する。
・ 手袋またはその他の道具を用いて、オオヒキガエルまたは重篤なカエルをポリ袋に入れる。
・ 冷蔵庫で4℃に保つ。
・ 鈍器ですばやく頭蓋を割る。

注意:オオヒキガエルとみなしてカエルを殺す前に正しく同定されているか、地方のNPWS
支社が知らせているNSW(北海岸)内のオオヒキガエルの通常の生息地域の外であるか確
認する。

付録4
認可された野生動物救護・救助団体
以下はNSW 国立公園と野生動物公共事業によって認可された野生動物復興グループのリストである。
表は省略。

付録5
病気または死亡したカエルの採取形式 

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2010年

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